【進出事例】2020年11月
abuzz global, LLC
豊かな知識基盤の活用
リン・M・スプリュゲル (Lynne M. Sprugel)
Founder and CEO
abuzz global, LLC
香港がソーシングハブとして活気があるゆえんは、その幅広く豊富な知識基盤と何世代にも渡り培われてきた専門知識だと語るのは、業界のベテランであり、ソーシングとサプライチェーンのリスク管理計画策定に特化したコンサルティング会社abuzz globalの創業者兼CEOリン・スプリュゲル氏だ。
これまで中国南部に集中していた工場が東南アジアや南アジアに移り、生産拠点が香港からさらに離れつつあるにもかかわらず、多くの企業は今なお香港が主要拠点であると考えているとスプリュゲル氏は言う。同氏は、テキサスに本拠を置くスポーツ用品やアウトドアライフスタイル製品の小売業者Academy Sports and Outdoorsでバイスプレジデント兼国際ソーシング担当マネージングディレクターを務めた経験を持つ。
「香港の優秀な人材は世界を理解しています。あらゆる物の分散が進む中、依然としてエコシステムの中心は香港にあります」と同氏は続ける。
香港の強みは過去数十年にわたり蓄積された知識と経験にある。「香港には、世界中のどこにも見つけることができない幅広い貿易関連の知識と情報があります」とスプリュゲル氏は言う。
「香港の人々はこの地域を熟知しています。また、香港は主要な国際会議の開催地でもあるため、あらゆる地域でいま何が起こっているかを把握できる場所なのです。」
危機に直面した時、遠隔地からできることには限界があるため、こうした知識が決定的な違いを生む、とスプリュゲル氏は指摘する。「実際に工場に出向き、きちんと再稼働しているかを確認する人が必要な場合もあります。また、中国の異なる省間で物を移動できるのかどうかを誰に聞けばいいかを把握している人が必要です」とスプリュゲル氏は話す。
さらに香港には領事館や通商代表部が集中しているため、企業は世界の国・地域の法律や規制に関する情報を迅速に収集することができる。「香港ではすべての領事館を1週間で回ることができますが、米国ではそうはいきません」とスプリュゲル氏は言う。
混乱への適応
香港の別の特長としては適応性が挙げられる。新たな技術がもたらす変化がソーシング・サプライチェーンを混乱させても、持ち前の適応性で対応できるのだ。
「香港では、数多くのイノベーションが起きています。例えばサンプルのオンライン承認、(テキスタイルの)カラー・マネジメント、AI(人工知能)、データ・クランチング、AR(拡張現実)システムやVR(仮想現実)システムといった大きな変革をもたらすビジネスが好況です」とスプリュゲル氏は話す。
さらに同氏は、香港がサプライチェーン管理ソフトウェア開発の中心地でもあるとし、その例として九龍に拠点を置くソーシング・ソリューション企業、CBX Softwareを挙げている。また香港紡織及成衣研発中心(Hong Kong Research Institute of Textiles and Apparel)による循環型の「garment-to-garment」と称したビジネスモデル(古着から新しい繊維、衣服を生み出す)など、繊維及び衣料産業に対する持続可能なソリューションを提供しているとして香港の評価が高まっている。
その結果、香港は斬新なアイディア、そして同業種や異業種間ならびに香港で増えつつある産業特化型の研究機関やビジネス・インキュベーターの間での新たなコラボレーションを試みる場としても台頭している。
スプリュゲル氏は「香港には力強い回復力があります。人々は社会不安や新型コロナウイルスに対し懸念を抱いていましたが、そこから回復する速さには驚きました。これもひとえに香港の労働倫理の高さと為せば成るという文化の賜物です」と語る。
同氏は、香港は「今なおビジネスに最適な場所であると世界に発信すべき」であると話し、それをもっとうまく伝えることができるのではないかと考えている。そして次のように付け加えた。「香港域外の人々は香港に関する悪い情報ばかりを見ていますが、いま官民両セクターがすべきことは、香港が持つさまざまなビジネスチャンスについて発信することです。」
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