イベント & 活動

オンラインセミナー:香港 ― ビジネスに有利な中国へのゲートウェイ

オンラインセミナー「香港 ― ビジネスに有利な中国へのゲートウェイ」主な質疑応答

1. 渡航制限、特に広東、深圳に関する渡航制限は、いつ解除されますか?香港政府はトラベルバブルやビジネストラックといった取り決めの導入を検討していますか?指定ホテルでの21日間の隔離義務について、香港政府はどのような方針とスケジュールで合理化または解除する予定ですか?

香港-海外の越境旅行

  • 新たな変異株が世界各地で猛威を振るうなど、新型コロナウイルス感染症の世界的な状況は依然として深刻であり、香港政府は中国国外のリスクが極めてもしくは非常に高い地域に滞在した人に対する21日間の強制隔離措置を維持する必要があります。しかし、4月12日に行政長官が発表した通り、香港は引き締めと緩和を繰り返す“ストップ・アンド・ゴー”戦略はとらず、海外各地の実際の状況に応じて隔離要件を徐々に調整していきます。一部地域では流行状況が安定し、公衆衛生上のリスクが低くなっていることから、政府は5月初旬、「ワクチンバブル」の概念に基づいて、極めてリスクの高い地域と非常にリスクの高い地域以外の海外地域に滞在していた人に関する隔離措置を調整しました。
  • 高リスク地域および中リスク地域に関する基本的な搭乗・隔離要件は従来と変わりませんが、以下の変更点があります。
    • 高リスク地域と中リスク地域について、ワクチン接種を完了した人の強制隔離期間を21日間から14日間に短縮
    • 低リスク地域(オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール)について、ワクチン接種を完了した人の強制隔離期間を14日間から7日間に短縮
    • 上記(i)、(ii)の下で期間が短縮された隔離を完了した人は、7日間の自己観察を行い、強制検査を受ける必要がある
  • 日本からの旅行者を含む香港への入境旅行者に関する対応は、下記のウェブサイトに記載されています。
    https://www.coronavirus.gov.hk/eng/high-risk-places.html

香港-中国本土の越境旅行

  • 中国本土では流行状況が制御されており、香港でも明らかに状況が安定してきたため、広東省とマカオの非香港居民が所定の条件を満たせば香港入境に際して強制隔離を免除される「Come2hk」制度を導入する準備が進んでいます。中国本土-香港間の越境旅行の段階的で秩序ある再開について、香港政府は中国本土当局と緊密な連絡を取っていきます。

トラベルバブル、ビジネストラックの取り決め

  • 比較的安定した流行状況の下で、香港政府は越境旅行を段階的かつ整然と再開すべく努めています。感染症例の輸入を防止する戦略の下、公衆衛生を守る必要性とのバランスを取りながら、昨年半ばからは、流行状況が比較的安定していて香港と経済・貿易面で緊密な関係にある諸外国との間で「トラベルバブル」の設定を模索しています。香港政府は引き続き感染症の進展を注意深く監視しつつ、地元での流行状況が安定していることを条件に、厳格な防疫措置を講じた上で諸外国との越境旅行の再開を検討し、適時に発表します。

2. 香港はこれからも国際金融センターであり続けますか?理財通(ウェルス・マネジメント・コネクト)は、企業にどのような利点をもたらしますか?

国際金融センターとしての香港

  • 香港はその制度的な強みを活かして、長年にわたり主要な国際金融センターであり続けており、この役割はかけがえのないものです。香港の金融サービス部門の特徴は、非常にオープンで国際化された市場、堅牢なインフラによるサポート、国際基準に沿った規制制度、法の支配、豊富な金融人材、あらゆる種類の金融商品、情報と資本の自由な流れです。香港にはこのような利点があるため、企業から上場場所として選ばれています。2020年の新規株式公開(IPO)による資金調達額は前年比27%増の500億米ドル超に上り、世界第2位でした。また香港は、バイオテクノロジー企業の上場場所としても世界第2位であり、アジアにおけるプライベートエクイティの中心地であるとともに、国際リスク管理センターとしてもよく知られています。
  • 加えて、香港の金融システムは健全であり、ショックに対する高いレジリエンスを持っています。刻々と変化するCOVID-19パンデミックの状況がその他の世界的な不確実性と相まって、この1年程度の間に世界中の金融市場が不安定化している中、香港の金融システムは円滑な稼働を続けており、通貨のペッグ制をはじめ市場のさまざまな要素も規律正しく機能しています。
  • さらに、「一国二制度」の下で香港は、中国本土と世界をつなぐ金融やビジネスの主要なゲートウェイとなってきました。2021年3月時点において、香港で上場している約2,500社のうち半数以上が中国本土企業でした。また香港は、世界最大のオフショア人民元業務センターでもあります。今後、香港は中国の双循環にさらなる貢献をし、成長を続ける中国本土の巨大市場から利益を得ることになります。中国の最高立法機関である全国人民代表大会が先日採択した第14次5カ年計画では、中国全体の発展における香港の役割が認められています。香港の金融サービス部門の発展に関連する施策として、香港の国際金融センターとしての地位向上支援、世界的なオフショア人民元業務のハブ、また国際的な資産管理・リスク管理センターとしての機能の強化、香港と中国本土の金融市場の相互アクセスの深化・拡大などが挙げられています。
  • 私たちはこれからも中国、アジアそして世界の国際金融センターとしての香港の地位を向上させ、香港の中国本土市場や世界の市場との接続性を生かしつつ、大湾区や「一帯一路」から生まれるチャンスを活用していきます。 また、香港をさらに広くて深い資金調達プラットフォームへと発展させ、グリーンファイナンスやサステナブルファイナンスの中心地としての香港の地位を向上させるとともに、金融技術の発展を支援していきます。
  • 今後、香港のプライベートエクイティファンドやベンチャーキャピタルファンドは、香港と日本の人口統計が類似していることから、ジェロンテクノロジー分野や関連産業の日本企業との協力機会を見出すことも考えられます。すでに公表されている、大湾区の都市における海外保険会社のアフターサービス事務所設立を許可する措置も、日本の保険会社にビジネスチャンスをもたらすでしょう。

理財通(ウェルス・マネジメント・コネクト)の利点

  • 中国本土の富裕層世帯(保有資産100万米ドル超)の約5分の1を擁する大湾区は中国本土でも指折りの豊かな地域であり、中国本土住民のオフショア資産への投資需要が高まっています。また、中国本土の成長可能性を取り込みたいと考える香港の投資家は、利回りの向上やさらなる分散投資のため、中国本土の理財商品に投資することに魅力を感じるかもしれません。中国本土の安定した経済成長と膨大な可能性を背景に、多くの海外投資家が中国本土関連の投資、特に人民元資産へのエクスポージャーを増やしています。
  • 2020年6月に中国人民銀行、香港金融管理局(HKMA)およびマカオ金融管理局が共同で発表した「理財通(ウェルス・マネジメント・コネクト)」は、香港、マカオおよび大湾区の中国本土9都市の住民による域内の銀行が販売する理財商品への越境投資を可能にし、住民の資産管理のニーズに対応するものです。理財通は、香港の金融業界のバリューチェーン全体や、その他の専門サービスに莫大なビジネス機会をもたらすだけでなく、境界を越えた人民元の流れと利用を促進し、世界的なオフショア人民元業務ハブおよび国際資産管理センターとしての香港の地位を強化します。
  • 北行き、南行きの総額を1,500億元とし、個人投資家1人あたりの投資枠は100万元に設定される予定です。
  • 香港の国際金融センターとしての地位を立証するデータや香港と日本の主な金融市場統計は下記をご覧ください。

香港の国際金融センターとしての地位を立証するデータ

金融部門が香港のGDPに占める比率 約21%
新規株式公開(IPO) 前年比27%増、154件の上場により516億米ドルを調達、2020年には世界第2位の規模に
中国本土経済とのつながり 香港での上場企業約2,500社のうち半数以上が、中国本土企業(2021年2月時点)
オフショア人民元業務センター
運用資産(AUM) 3兆7,000億米ドル相当の資産(香港のGDPの10倍)で、そのうち64%は香港外の投資家によるもの

香港と日本の主な金融市場統計

香港 日本
証券市場*
時価総額(単位:十億米ドル)
(2021年2月末)
6,763 6,540
<アジアでの順位> <1位> <3位>
<世界での順位> <3位> <5位>
株式による資金調達額(単位:百万米ドル)(2020年) 95,919 38,007
<アジアでの順位> <2位> <4位>
<世界での順位> <3位> <9位>
IPOによる資金調達額(単位:百万米ドル)
(2020年1月〜3月)
17,110 1,011
<アジアでの順位> <1位> <8位>
<世界での順位> <3位> <16位>
資金運用*
上場投資信託(ETF)の数^
(2021年2月末時点)
149 264
<アジアでの順位> <4位> <2位>
<世界での順位> <18位> <15位>
ETF取引高(単位:百万米ドル)
(2021年1月〜2月)
43,291 86,787
<アジアでの順位> <8位> <3位>
<世界での順位> <9位> <6位>
債券市場
債券残高(単位:十億米ドル)
(2020年9月末)
544 14,083
<アジアでの順位> <6位> <2位>
<世界での順位> <25位> <3位>
アジアにおける債券発行総額(単位:十億米ドル)
(2020年末時点)
598 N.A.
<アジアでの順位> <3位> N.A.
- 現地通貨建て 563 2,093
<世界での順位> <5位> <2位>
アジアの借り手によるアジアでの国際(オフショア)債券発行額@(単位:十億米ドル)
(2020年末時点)
- 主たる発行地
196 3
<アジアでの順位> <1位> <4位>
<世界での順位> <1位> <7位>
- 主たる発行地での最初の起債 18 N.A.
<アジアでの順位> <1位> N.A.
<世界での順位> <1st> N.A.
- 上場場所別 161 N.A.
<アジアでの順位> <2位> N.A.
<世界での順位> <2位> N.A.
銀行部門
対外取引残高(単位:十億米ドル)
(2020年9月末)
2,962 5,742
<アジアでの順位> <2位> <1位>
<世界での順位> <6位> <4位>
外国為替市場
外国為替取引総額(単位:十億米ドル)
(2019年4月)
632 376
<アジアでの順位> <2位> <3位>
<世界での順位> <4位> <5位>
保険市場
保険密度(単位:米ドル)
(2019年)
9,706 3,621
<アジアでの順位> <1位> <5位>
<世界での順位> <2位> <16位>
総保険料収入(単位:十億米ドル)
(2019年)
72 459
<アジアでの順位> <6位> <2位>
<世界での順位> <15位> <3位>
保険普及率 (%)#
(2019年)
19.74 9.00
<アジアでの順位> <2位> <4位>
<世界での順位> <2位> <13位>
金融サービスの世界ランキング
世界金融センター指数 (2021年3月時点)
<世界での順位> <4位> <7位>
(東京)
金融システム(2019年世界競争力レポート)
<アジアでの順位> <1位> <4位>
<世界での順位> <1位> <12位>

注:

(*) 香港証券取引所(Hong Kong Exchanges and Clearing Limited)と日本取引所グループ(Japan Exchange Group)を指す。
(^) ETFは、規制された取引所での上場または取引が認められているポートフォリオ投資商品である。ETFは、さまざまな株式やその他の金融商品バスケットへのエクスポージャーを投資家に提供する。ETFは、特定の指数におけるパフォーマンスを再現することを目的とするもので、この指数には、優良株指数、地域別指数、セクター別指数などが含まれる。指数の種類は株式に限らず、債券指数やその他の高度な指数を含む場合がある。ETFは、その他の株式と同様に取引される。これらの商品は、投資家がヘッジツールまたは投資商品として利用することができる。
(@) 現地以外の市場で販売される銘柄の国際債券またはオフショア債券を指す。アジアの借り手とは、事業の大部分をアジアで行っている借り手と定義する。主たる発行地は、案件の主幹事の50%以上が所属する管轄区域とする。
(#) 保険普及率とは、国内総生産(GDP)に占める保険料(生損保)の割合を指す。
(N.A.) 該当なし。

3. 香港が日本の食品や農産物の一部に課している輸入禁止措置は、いつ解除されますか?日本の食品や農産物を中国本土に再輸出するためのハブとして、香港はどんな役割を果たすことができるのですか?

  • 日本の食品や農産物を中国本土へ再輸出するハブとして香港を活用する日本企業を歓迎します。
  • 香港は中国本土市場へのゲートウェイとして機能しています。貨物取扱施設について言えば、香港国際空港は活魚、果物、野菜、冷凍肉といった生鮮貨物のコールドチェーン物流対応能力を強化してきました。香港経由で中国本土へと輸送される食品(香港には輸入されないもの)については、香港では特に輸入規制要件を設けていません。再輸出に関しては、当該食品の中国本土への輸入が許可されている限り、中国本土への再輸出を目的とした香港への食品持ち込みに対する制限は基本的にありません。ただし、冷蔵・冷凍の肉や家禽など特定の食品カテゴリーについては、香港特別行政区政府食物環境衛生局からの輸入許可が必要です。その場合、輸入許可の申請は24時間いつでもオンラインで行うことができ、全ての必要書類が揃っていれば数時間から1日で輸入許可が下ります。
  • 2011年3月に発生した福島の原子力発電所の事故後における福島県およびその近隣4県(茨城県、栃木県、千葉県、群馬県)からの食品輸入についてですが、近隣4県からの特定の食品の輸入停止は2018年7月に解除され、放射性物質検査証明と輸出事業者証明を提出することで輸出できるようになりました。また2021年1月からは、日本産食品の全ロット放射線物質検査が廃止され、通常の食品監視プログラムの下でリスク評価に基づいた検査が実施されています。この新しい措置の実施後は、日本から香港に到着する年間約4万件の食品貨物のほぼ全てが、空輸でも海上輸送でも、到着後すぐの引き渡しが可能になっています。この措置は業界からも歓迎されており、実際、公衆衛生の確保と貿易の円滑化とのバランスが取れていることを実証するものです。
  • 福島県産の特定の食品(野菜、果物、牛乳、乳飲料および粉乳)の輸入停止措置に関してですが、香港の人々は多くの日本産食品を消費していることから、市民が懸念を持つのも無理からぬことです。私たちは日本側との対話を続け、できるだけ多くの科学的データを収集した上で市民に状況を説明することで、福島県産食品に対する人々の信頼を高めていきます。

4. ネット・ゼロ・コミットメントから新たな機会が生まれている中、香港は商業的に採算の合うチャンスを「創出」するために、どのような政策、規制や基準を策定するのでしょうか?

  • 2020年施政方針演説で、香港は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと発表されました。この目標の達成に向けて政府は、今年後半に2017年発表の「香港気候変動行動計画2030+」を更新し、より積極的な炭素排出量削減戦略と措置を定める予定です。
  • 香港政府は二酸化炭素排出量削減のためのさまざまな手段を検討します。例えば、多様なゼロカーボンエネルギーや脱炭素技術の検討、新築および既存建物のエネルギー効率向上、より厳格なエネルギー効率基準の導入、ゼロカーボン車やグリーン輸送手段の推進、大規模廃棄物発電施設の建設などです。
  • 香港の二酸化炭素排出量の約66%は、発電が占めています。大幅な脱炭素化を図るため、電力会社が石炭の代わりにより多くの天然ガスを発電に使うようにし、もっと多くのゼロカーボンエネルギーの供給を目指しています。ほとんどの燃料は輸入であることから、近い将来、天然ガスの需要が増加すると予想しています。特に2022年の洋上液化天然ガス(LNG)基地の新規稼働に伴い、LNGの需要増加が見込まれます。サプライヤーとなり得る企業にとって、これは注目すべきことかも知れません。
  • 同時に香港政府は再生可能エネルギー(RE)の開発を率先して行っており、例えば、貯水池や埋立地にREシステムを建設しています。また、ここ数年の間に下水汚泥処理施設のT・PARK、食品廃棄物処理施設のO・PARK、都市固形廃棄物処理施設のI・PARKなど、いくつもの最先端廃棄物発電インフラの建設を進めてきており、廃棄物処理会社はこれら事業の実施に大きな関心を寄せています。
  • 政府外においては固定価格買取制度(FiT)を導入しており、投資家はグリッド向けに発電した電力の単位ごとに3香港ドルから5香港ドル(約40円から70円)の支払いを受けることができます。ほかにも屋上設置制限の緩和、学校や福祉団体によるシステム設置の支援といった支援策があり、同制度にはわずか2年間で1万4,000件以上の申し込みがありました。このように、太陽光発電システムをはじめとするRE設備やサービスの市場は活況を呈しています。関連する経験や専門性を有する日本企業も、これらのビジネスチャンスを期待できます。
  • よりクリーンなエネルギーの使用を推進する一方で、エネルギーをより賢く使う必要があります。香港の電力使用量の90%、二酸化炭素排出量の約60%を建物が占めていることから、より厳格なエネルギー効率基準の導入、レトロコミッショニングやレトロフィッティングの推進など、新築および既存の建物両方のエネルギー効率を高める方法を探っています。日本企業も香港の建設業界と手を組んで、建物のエネルギー効率性能向上に参画することができます。香港では、エネルギー効率が非常に高い冷房ソリューションを提供する地域冷房システム(DCS)の環境面での利点を活かそうと、現在、啓徳開発エリアでDCSを使用しており、東涌ニュータウン拡張部分(東)や古洞北など、その他の新規開発地域でも使用する方針です。今後のDCSプロジェクトは、日本企業をはじめとする関連事業者により多くの機会を提供することでしょう。
  • 2018年の香港の二酸化炭素排出量のうち、運輸部門は約18%を占めています。そこで、鉄道網の拡張、環境に優しい車両やフェリー(電気自動車や電気フェリーなど)の普及により、運輸部門の二酸化炭素排出量を削減してきました。また、新エネルギー輸送(NET)基金を設立し、運輸業界が環境に優しい革新的な輸送技術を試し、幅広く採用することを奨励しています。
  • 電気自動車(EV)の普及は香港政府の重要課題です。今年3月、「香港電気自動車普及ロードマップ」を発表し、香港でEVおよび関連設備の導入を推進する長期的な政策目標と計画を明らかにしました。香港でのEV利用を促すため、EVの新規登録税優遇を開始するとともに、昨年10月には20億香港ドル(約280億円)の「家庭用EV充電器補助金制度」を立ち上げ、既存の民間住居用建物の駐車場へのEV充電可能なインフラの設置を促進しています。日本の自動車業界が、今後の香港におけるEV需要の増加を見据えて、自家用 EVや商用EVを含む香港に適したEVをより多く開発することを歓迎します。拡大する香港EV市場への日本企業の参加を期待しています。

5. 深圳・香港科技創新協力区では、香港の規則や規制が適用されるのでしょうか?また、香港サイエンスパーク社が一部の施設を管理する予定になっている深圳サイエンスパークに関する最新情報はありますか?

  • 第14次5カ年計画では、大湾区発展計画の推進に加え、香港が国際的なイノベーションとテクノロジー(I&T)のハブへと発展することへの支持が明確に示されています。この分野での代表的なプロジェクトは、落馬洲河套地区の香港・深圳イノベーション&テクノロジーパーク(HSITP)であり、同パークは大湾区での協力における主要プラットフォームにもなります。
  • 香港政府は世界中の一流企業、研究開発機関や高等教育機関との連携を通じて科学研究協力の重要拠点を確立することを目指して、HSITPの開発を全力で進めています。完成すると、HSITPの総床面積は120万平方メートルと現在の香港サイエンスパークの約3倍となり、同パークは香港で過去最大のI&Tプラットフォームとなります。
  • 今年2月、HSITPの第1群開発を進めるための予算について立法会の承認を得ました。香港・深圳イノベーション&テクノロジーパーク社は、第1群の8棟の建物を2024年から2027年にかけて段階的に完成させることを目標に、関連工事を鋭意進めています。
  • さらに、香港と深圳の両政府は「一国二制度」の下、「一区二園」の実現を目指して、深圳科創園区とHSITPからなる深圳・香港科技創新協力区(協力区)の開発を共同で行っています。深圳科創園区に隣接するHSITPには戦略的優位性があります。香港の確かな研究開発力と深圳の先進的な製造における高い能力を組み合わせることで、「一区二園」構想は上流、中流、下流のプロセスを網羅する付加価値チェーンを実現し、両都市の相互補完的な長所を生かすものです。
  • 両政府はまた、HSITPの第1群建物が完成するまでの間、香港サイエンスパーク社が深圳科創園区の一部エリアの賃貸と管理を行うことで合意しています。これにより、大湾区での開業に関心のある研究機関や企業は、まず深圳科創園区に拠点を設けることができます。

6. 前海では昨年8月から、現地で登記している香港企業はビジネス契約や合意について、香港の法律を選択できるようになりました。香港をアジア太平洋地域における国際的な法律・紛争解決サービスセンターとして発展させることを視野に、この措置は近い将来、大湾区のその他地域にも適用されますか?

  • 大湾区発展における香港の役割の1つは、「発展計画綱要」にも述べられている通り、アジア太平洋地域の国際的な法律・紛争解決サービスセンターとしての地位を確立することです。香港には、国際的なビジネス界になじみの深い成熟した法制度があり、仲裁・調停の分野では第一線にあります。
  • さらに香港の法律・紛争解決専門家は、さまざまな分野での国際的な経験が豊富です。法律・紛争解決サービスにおける香港独自の強みは、大湾区において多面的な紛争解決メカニズム、高品質で効果的かつ利便性の高い司法・法律サービスおよび予防措置を促進する上で役立つことでしょう。
  • 香港政府は、大湾区で革新的かつ先進的な法律関連提案が実行されるよう提唱してきており、最近、中央政府の強力な支持により、画期的な進展がいくつかありました。
  • 例えば、「深圳経済特区前海深港現代サービス業協力区条例」が2020年8月に改正、承認され、2020年10月に施行されました。同条例の第57条は、前海で登記している香港資本企業、マカオ資本企業、台湾資本企業、外商投資企業は「海外関連要素」1がない場合にも、民法契約および商事契約を締結する際に、香港の法律を含め、適用する法律を合意の上で選ぶことができると定めています。
  • この試験的な措置により、前海で登記している1万1,000社以上の完全香港資本企業は、民法契約および商事契約を締結するにあたり、より広く香港の法律を適用できるようになりました。香港政府では現在、この措置を深圳および大湾区全体に拡大し、大湾区内の完全香港資本企業が、「海外関連要素」がない場合にも、仲裁地として香港を選択できるよう、中央政府の支持を得ようと積極的に努めています。

7. 香港で会社を設立する明らかな利点は何ですか?香港での事業拡大を目指す日本企業を含め、すでに香港に進出している日本企業は、“ビジネスに有利な中国へのゲートウェイ”としての香港からどのような恩恵を受けることができるでしょうか?

  • 香港特別行政区政府は中国本土と香港の経済連携緊密化協定(CEPA)を通じて、香港企業の中国本土市場への参入を支援しています。2016年6月から実施され、最近では2020年に修正されたCEPAサービス貿易協定では、金融、法律、建設および関連エンジニアリング、試験・認証、テレビ、映画、観光などの重要な分野において、広範にわたる自由化措置を導入しています。
  • CEPAは国籍を問いません。サービス貿易については、日本のサービス提供者が香港で事業を立ち上げたり、香港企業と提携したりすることで、CEPAを活用して大湾区をはじめとする中国本土の市場を開拓することを歓迎します。香港の日本企業は、業種により3年もしくは5年の間、実質的な事業活動を行い、法人税の納付実績があるとともに、香港に事業所を置き、香港居民を従業員として雇用している場合、CEPAの優遇措置を受けることができます。
  • CEPAに基づく中国本土全体の自由化措置のほか、広東省で試験的に実施されている自由化措置があります。これらの措置により、香港のサービス提供者や専門家が中国本土で会社を設立し、事業を展開することが容易になります。専門サービス分野における自由化措置の例を以下に示します。
    • 会計: 中国の公認会計士資格を取得した香港の公認会計士が中国本土のパートナーシップ会計事務所のパートナーになるための要件については、内国民待遇が認められています。これに基づき、香港特別行政区政府は中国本土当局と、香港の公認会計士が大湾区でさらに業務を行いやすくするための措置を探っていきます。
    • 保険: CEPAサービス貿易協定の修正により、香港の保険会社、保険代理店および保険仲介会社が中国本土の市場に参入する際の基準がさらに緩和されました。
    • 銀行・証券: CEPAの枠組みの下で香港銀行学会(HKIB)と中国銀行業協会(CBA)は2015年に協力協定を締結し、中国本土と香港の銀行実務者が関連試験を通じて相互に認定される専門資格を取得できるようにしました。HKIBとCBAはまた、香港の人材を対象としたQCBP(銀行業務専門家資格認定)試験を香港で実施することにも合意しています。金融財務省は、香港の証券専門家の中国本土における活動範囲を広げるべく、中国本土の関連当局との緊密な連絡を保っていきます。
    • 法律: 近年、香港の法律業がその優位性をさらに活かし、競争力を向上させることを可能にする画期的な出来事がいくつかありました。例えば、大湾区法律専門家試験、前海に設立された香港の完全所有企業および外資企業の民事・商業契約に適用する法律の選択権、パートナーシップ組織に関するさらなる自由化措置、法律コンサルタントに関するさらなる自由化措置などが挙げられます。
    • 建設・エンジニアリング: 住宅、埋立、鉄道、岩石洞窟開発といった分野における香港の今後のインフラ事業により、関連部門に膨大なビジネスチャンスがもたらされます。大湾区関連では、広東省住宅都市農村建設部(DHURD)は、2021年1月1日からの実施のため、2020年11月下旬に公式ウェブサイトを通じて「広東・香港・マカオ大湾区で開業・執務する香港の工程建設コンサルタント企業および専門家の管理に関する暫定ガイドライン」を公布しました。香港特別行政区政府の2つのリスト(建築および関連コンサルタント選定委員会ならびにエンジニアリングおよび関連コンサルタント選定委員会)の登録企業や、香港の関連する登録管理局に登録されている専門家は、登録を行うことで中国本土の同等資格を取得でき、大湾区の中国本土都市で直接サービスを提供することが可能です。また、香港を拠点とする土木建築業者やコンサルタントが、前海特別経済区での建設事業に参画できるようにする新たな措置が講じられています。
  • サービス貿易とは別に、CEPAの枠組みの下、物品貿易協定が2019年1月1日から実施されています。この協定は、CEPAの下での物品貿易の自由化と円滑化に向けた取り組みを強化・更新し、その自由化のレベルをさらに高めるものです。中国本土に輸入される香港原産の物品は、関連する原産地規則(ROO)を満たしていれば、全面的にゼロ関税の適用を受けることができます。日本の投資家も、香港に製造拠点を設けてCEPAの原産地規則を満たす商品を生産すれば、ゼロ関税の優遇措置を受けられます。
  • CEPAの物品貿易協定には、「広東・香港・マカオ大湾区における貿易円滑化措置」を専門に取り上げた章があります。この章には、大湾区における物品の便利で効率的な流れを促進するために、貨物の通関所要時間を定期的に公表し、さらなる時間短縮を図るなど、双方が実施に合意した貿易円滑化措置の詳細が記されています。

8. 香港で法の支配と「一国二制度」は維持されますか?住民や企業の自由は今後も守られるのでしょうか?

  • 「一国二制度」は、香港の安定と継続的な成功の基盤となるものです。香港は「一国二制度」の下で高度な自治権を行使し、独自の経済社会制度とコモンロー制度を維持しています。
  • 「一国二制度」の下、
    • 香港は9,000社以上の海外および中国本土の企業が事業を営む、世界的なビジネスと金融のハブであり続けています。
    • 香港住民は言論、集会、行進、情報、報道および宗教的信条の自由を引き続き享受しています。
    • 香港の法制度は中国本土の法制度とは別個のものです。香港におけるコモンロー制度の継続は、基本法によって保護されています。香港は独自の法律、独自の裁判所、独立した司法と独自の法律専門家を維持しています。
  • 日本のビジネス界が香港の現状を懸念していることを、私たちは理解しています。2019年に長期化した社会不安、地政学的緊張および中米貿易戦争がもたらす不確実性、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済の深刻な混乱にもかかわらず、安定した堅固な金融制度を持つ、自由で開かれたダイナミックな都市としての香港の基盤は損なわれていません。国家安全維持法の制定後、安定と治安が取り戻された香港は、安全に暮らし、働くことのできる世界有数の都市です。
  • 法の支配と司法の独立は香港の内外を問わず、市民や企業の信頼にとって極めて重要であるということを、私たちは十分に理解しています。法の支配はまさに核心的価値であり、香港の成功の礎です。また司法の独立は、法の支配を守るための要となるものです。香港の法の支配には強固な基盤があります。それは、その透明性、信頼性、公正さで知られる香港の成熟した法制度です。律政司はいかなる干渉も受けることなく刑事訴追を担当し、裁判所はいかなる干渉も受けることなく独立して司法権を行使し、香港の全ての人が法の下で平等であることを保証するための強固な法律扶助制度が設けられています。これらの要素は基本法の下で保護されています。
Last Updated: June 23, 2021

▲ Page top