ニュースリリース

財政長官、新経済秩序に対応する予算手段を発表

2016年2月24日

曾俊華(ジョン・ツァン)財政長官は、情報技術の飛躍的進歩と世界経済における新興市場の影響力拡大により形成された新経済秩序の下、香港は新たな発展の機会を特定し、迅速に行動すべきだと述べた。

本日(2月24日)の2016~17年度予算演説において長官は、香港はその強みとともに、香港市民の持ち前の柔軟性、応用力、市場洞察力を活かして、新経済秩序で居場所を見つけるべきだと述べた。

長官はロボット技術、健康的な高齢化、「スマートシティ」を、香港がその研究開発成果を応用し商業化することのできる領域として挙げた。

「人口高齢化と労働力の減少に伴い、スマート生産技術、とくにロボット技術の活用は不可欠である」と長官は述べた。

香港サイエンス&テクノロジーパーク社(HKSTP)は、製品研究開発およびデザインから、製造、試験、マーケティング、ブランディングまで全体的な価値連鎖の発展を加速するため、ロボット技術と情報技術を使ったスマート生産と研究の促進を将軍澳工業団地で進めようとしている。

健康的な高齢化について、サイエンスパークの支援の下、地元メーカーによって電動車いす、医療用画像スキャニング装置、脳こうそくの回復のための医療機器などが開発されていると長官は述べた。バイオテクノロジー、医療、薬品はサイエンスパークの中核的な研究開発の分野であり続ける。「よりよい生活のための技術革新・技術基金」に5億ドルが拠出されると長官は述べた。

「スマートシティ」に関してツァン長官は、配水網にセンサーを取り付ける「スマート水道網」事業を段階的に進めると述べた。加えて、最新の逆透過技術を用いた新たな海水濾過プラントを将軍澳に建設することを明らかにした。同施設の第一フェーズの設計は、2015年末に開始されている。

新たな資金援助計画の導入や、既存制度の強化によって、より多くの民間企業が研究開発や応用技術に投資し、香港で生まれた優れた研究開発成果を商業的価値を持つ製品やサービスへと変換することを促す。

これには、高等教育機関に主要技術分野におけるより多くの中流・応用研究計画の実施を促すことを目的とした、20億ドルの「大学中流研究開発計画」などが含まれる。「研究開発キャッシュバック計画」の下でのキャッシュバックの水準は、民間企業、中でも中小企業が研究開発への投資を増やすことを奨励すべく、40%にまで引き上げられる。「公的部門試用計画」の対象は、サイバーポートとサイエンスパークに入居する新興企業にも拡大される。一方、6大学の技術移転に資金援助をする計画は2018~19年度まで延長される。

長官は、香港は世界屈指の人気を誇るスタートアップ・ハブになっているとし、政府はビジネス育成、資金調達、事業拡張、事務所スペースなどを含め、新興企業に対する包括的な支援を引き続き提供すると述べた。

政府は20億ドルの「技術革新・科学技術ベンチャー基金」を設立し、民間ベンチャーキャピタルとともに同額拠出方式で地元のテクノロジー新興企業に投資すると述べた。

サイエンスパークは段階的に拡張され、2020年までに新興企業やその他のテクノロジー企業のため床面積7万平方メートルのスペースを追加提供する。44億ドルと見込まれる費用は、政府とHKSTPが分担する。

サイバーポートは新興企業への投資用に2億ドルを確保する。一方、HKSTPは引き続き、その企業ベンチャー基金とインキュベーションプログラムを通じて新興企業を支援する。

テクノロジーを金融部門に応用したフィンテックもまた、香港に長期的なチャンスを提供する。香港におけるフィンテックの方向性を検討するため、昨年自らが設立した金融技術ステアリンググループの提案を実行に移していくと長官は述べた。

さらに、インベスト香港の専門チームが国際的なイベントを開催し、またフィンテック分野のスタートアップや投資家、研究開発機関の香港進出を促す。

技術革新・科学技術基金の下で実施されている企業支援計画は、新興企業や金融機関を支援する。サイバーポートはフィンテック関連のスタートアップのために専用スペースを確保し、今後5年間に最大150社のフィンテック関連新興企業を支援するプログラムを開始する。さらに、大学生300人をフィンテック研修キャンプ参加のため、海外の大学へ派遣する。

長官はクリエイティブ産業も新経済秩序の一部であるとし、香港は引き続きその健全な発展を支援すると述べた。これには、「クリエイトスマート計画」」への4億ドルの支出を通じ、スタートアップ支援および人材育成を優先的に行うことが含まれる。

ファッション、デザイン、映画産業などについても、さまざまなイニシアティブが始動、強化される。

長官は新興国市場が新経済秩序のもう一つの主要な原動力であると述べた。「この潮流を鑑みれば、香港は世界各国との貿易関係を拡大し、香港企業のためにより多くの市場を開拓する必要がある」と述べた。

それは、「一国二制度」の下における香港独自の優位性によって実現することができると長官は述べた。

中国の一帯一路沿いに位置する新興国市場は、香港の今後の発展の新たな活路となると考えられ、政府はこれらの新しい市場に関する香港企業の理解を今後とも深めていくと長官は述べた。一帯一路に関する第1回サミットが、香港貿易発展局との共催で5月に開かれる。

政府は、香港企業がより有利な条件を享受できるよう、貿易・投資協定の締結を引き続き進めると長官は述べた。

長官は、香港とASEANとの自由貿易協定の交渉が年内には完結する見通しであるとし、あわせて政府は中国本土が他国と結んだ、そして今後締結する自由貿易協定への香港の参加も求めていくと述べた。

政府は香港の商業的接続性を強化し、航空・海運センターとしての香港の地位を保持するとともに、高付加価値物流サービスの発展を支援する。香港空港管理局は3滑走路システムの整備を進めている。政府はまた、航空機リース事業の振興のため優遇税制の導入を検討し、航空融資におけるビジネスチャンスを探っていく。

金融サービスと新興国市場に関して長官は、政府はより多くの多国籍企業と中国本土企業が香港に財務統括拠点を設けるよう誘致を図っていくと述べた。そのため政府は、条件を満たす財務統括拠点の法人税を最大50%削減することなどを盛り込んだ法案を、立法会に提出した。政府はさらに、ファンド登録地としての香港のプラットフォームの一層の多元化を進めるため、オープン型ファンド形式の会社構造を認可する法的枠組みを整備する法案も立法会に提出している。

政府はグリーン金融商品の開発における香港の強みをアピールする努力を強化し、香港空港管理局はグリーン債を通じた資金調達の可能性を検討する。

過去2年間に実施した2回のイスラム債発行の成功を踏まえ、政府は適切な時期に3回目となるイスラム債発行を実施する予定だ。

高齢者は安定した利益が見込める投資商品を探している。金融関連企業がこの潜在力に満ちたシルバー市場を開拓するのを奨励すべく、政府は今年と来年、65歳以上の香港市民を対象に「シルバー債」を発行する試験計画を開始する。

加えて、最大100億ドル分の物価連動型債権(iBond)を発行する。これは、政府債券計画の下、2011年以来5回にわたり実施されてきた発行の成功を踏まえたものである。

以上