バンブーシアター

日本のお盆にあたる「盂蘭節」などの祭りや祝日に伝統劇を上演するため、竹を組んで建てられる臨時の劇場。漁村、町、サッカー場などあちこちで見ることができる。香港ならではの民俗文化や伝統工法を忠実に再現し、職人技と劇場の賑やかな雰囲気を伝えるため、作者は1,000個以上の電球に一つ一つ色を塗り、花看板も手作りした。

何國添 (Tim HO)

沙田のドラゴンボートレース

毎年、旧暦5月5日の端午節に行われるドラゴンボートレース。本作品は、沙田(シャティン)を流れる美しい城門川で開催されたドラゴンボートレースの熱狂を伝えている。一番にゴールしたチームの選手たちが歓喜する中、後を追う2艇が2位と3位の座をかけて熾烈に争う様子が、動きのないミニチュアでありながら躍動感いっぱいに表現されている。

陳鴻輝 (Hung Fai CHAN)

長洲島の饅頭祭り

「長洲太平清醮」は、毎年旧暦4月8日(お釈迦様の誕生日)に長洲島の住民によって行われる伝統祭事で、2011年に無形文化遺産として登録された。パレードとともに、「搶包山」という饅頭の争奪戦がこの祭りの目玉であるため、饅頭祭りとも呼ばれる。2012年の搶包山では12人の出場者が、饅頭が取り付けられた14mもの高さのタワーをよじ登り、制限時間内に饅頭を何個取れるかを競った。

陳鴻輝 (Hung Fai CHAN)

黄大仙廟の風車屋

あらゆる願いをかなえる場所として香港で最も参拝者が集まる寺院、黄大仙(ウォンタイシン)廟。寺院の隣には、縁起物とされるカラフルな風車を売る露店があり、風車の他にも吊るし飾り、お清め用の香油、紙札、道教の占い儀式の道具である聖杯、幸運のお守り瓢箪、竹筒に入った棒で占うおみくじなど実に多くのものを扱っている。その彩りを表現するため現地でじっくり観察して、時間をかけて一つ一つ手作りしているが、作者の一人である何国添は黄大仙区育ちのため、本作品に特に深い想いをもって制作した。それぞれの風車の違いを探してみるのもまた楽しい。蔡璧龍が担当した人物フィギュアのリアルさにも注目してほしい。生き生きとした表情の父娘と露店の店主がやり取りをする光景が描かれているが、よく見ると店主は『イカゲーム』のおじいさんのようだ。作者の遊び心が感じられる。

蔡璧龍、何國添 (Ian CHOI, Tim HO)

大坑村の火龍の舞い

大坑村は香港島の銅鑼湾(コーズウェイベイ)にある。伝説によれば、100年以上前に村で疫病が流行した際、村民が中秋節に火龍の舞いを演じ、爆竹で祓ったところ収まったという。以来、大坑村の住民は毎年、中秋節には火龍の舞いをすることで平穏に過ごせるよう祈願してきた。この作品は、1970年代の火龍の舞いの賑やかな様子を再現したもの。巨大な火の龍は、100人ものミニチュアの男たちによって舞い踊っている。0.5㎜の光ファイバーで火龍の胴体の線香を模し、ランプが光るとしっぽが揺れるという精巧な細工がしてある。多くの見物客の背後に建つ「龍渓台」は改築され、今では香港住宅協会の本部となっているため、昔の様子はこの模型を眺めてしのぶほかない。

黎熾明 (Tony LAI)

客家氏族村の大皿料理宴会

「盆菜」は新界地区の「圍村」に伝わる特別な日のための伝統料理で、数百年もの歴史がある。盛り合わせ式の一種の大皿料理であり、祝い事があると「盆菜宴」が催される。10種類程度の材料を使い、底に大根を敷いた上で湯葉、魚つみれ、豚の皮、豚肉、中国うなぎ、イカ、エビ、鶏肉などを、層になるように大きな器に盛りつけていく。

李來有、彭惠娟 (Loi Yau LI, Ann PANG)

中秋節の提灯を売る線香店

中秋節の1～2カ月前から、香港の線香店では店の内外にさまざまな提灯を吊り下げ始める。作者は伝統的な手法でミニチュアの提灯を作るべく、職人の師匠から作り方を教わった。実際にやってみると時間のかかる大変な作業であり、職人たちが中秋節のために、春のイースターの頃から提灯作りを始める理由が分かったという。

陳翠薇 (Louise CHAN)

長寿を祝う宴

「壽宴」とは、50歳以上の人の長寿と幸せを願って開催する宴のこと。香港式のレストランで開かれた壽宴の様子を再現したこの作品では、子豚の丸焼き、エビのすり身で包んだカニ爪揚げ、鶏とフカヒレのスープ、魚の浮き袋とガチョウの水かきの煮込みなどに加え、長寿を祝う桃饅頭がテーブルいっぱいに並べられている。

陳慧姬、陳翠薇、熊貓玲玲 (Maggie CHAN, Louise CHAN, Panda Ling Ling)